半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2005年06月07日

営業現場の科学
第31回 「スイッチング・コスト」に切り込め
営業戦略チーム

 スイッチング・コストとは、現在使用している商品・サービスから他の商品・サービスに切り替える際に、追加的に支払うコストのことをいう。あなたが攻略したい取引先が、あなたの会社の商品・サービスより機能・性能や価格の面で劣る競合会社の商品・サービスを使用・取引しているとしても、物理的なコストのみならず、このスイッチング・コストが競合会社と継続取引する誘因を与えるため、容易に切り替えは進まない。攻略したい取引先の担当者は切り替えを行うかどうかを、つぎのように検討している。

( 提案された商品・サービスの価格 ) ( 提案された商品・サービスによる効用 ) ( スイッチング・コスト )

 ここで、「価格以上のメリットが享受できるか」だけではなく、切り替えに伴って発生するスイッチング・コストが差し引きされて、検討されていることに注意が必要だ。競合他社を攻略し、自社へ取引を切り替えさせるためには、闇雲な商談活動でなく、このスイッチング・コストに切り込む提案が必要である。

 では、スイッチング・コストを発生させている要因を検討してみよう(図表)。


図表.スイッチング・コストの発生要因


 サーチコストを低減させるためには、提案する商品・サービスと同じカテゴリーにある商品・サービスを一覧比較できるリストの作成を代行し、情報提供することが基本になる。もちろん、単純なリスト提供ではなく、提案する商品・サービスが競合他社と比較し、いかに取引先へ革新的なベネフィットを提供するかを説明できるようにしなくてはならない。学習コストに対しては、実務上で必要となる必要十分な情報で構成させるコンパクトなマニュアルを独自に提供したり、短期間の実務研修などの組み合わせを検討してみる。累積投資コストに対しては、競合会社の提供していた特典を引き継ぎして提供するなどの販促を検討する。関係構築コストに対しては、初期段階での高密度の訪問活動を通じて一気に関係を構築することで対応する――あなたの行っている提案活動は、こうしたスイッチング・コストを低減させ、すすんであなたの会社の商品・サービスに切り替えたいという契機を与えるようにデザインされているだろうか。また、逆に、既存の得意先に対し、高いスイッチング・コストの構造を作り出せば、得意先との安定継続的な関係を構築することができ、長期的な収益確保が可能になる。



おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


新着記事

2025.01.22

24年11月の「家計収入」は2ヶ月連続のプラスに

2025.01.22

24年11月の「消費支出」は7ヶ月ぶりのプラスに

2025.01.21

企業活動分析 株式会社サイゼリヤ 24年8月期は引き続きアジアがけん引し増収増益

2025.01.20

MNEXT 新たな成長戦略で日本再生へ―トランプ2.0を契機に転換

2025.01.17

消費者調査データ No.419 キャッシュレス決済(2025年1月版) 利用経験ついに5割超え 「PayPay」独走態勢なるか

2025.01.16

24年11月の「現金給与総額」は35ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2025.01.16

24年11月は「有効求人倍率」、「完全失業率」とも横ばい

2025.01.15

月例消費レポート 2024年12月号 消費は足踏み状態が続いている-国内外からの物価上昇圧力は消費にマイナスの恐れ

2025.01.14

企業活動分析 マンダムの24年3月期は2期連続の増収増益、女性事業が好調

2025.01.10

24年11月の「新設住宅着工戸数」は7ヶ月連続のマイナス

2025.01.09

24年12月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のマイナス

2025.01.08

企業活動分析 富士フイルムHDの24年3月期は増収増益、過去最高を更新

2024.12.27

24年11月の「ファーストフード売上高」は45ヶ月連続のプラスに

2024.12.27

24年11月の「ファミリーレストラン売上高」は33ヶ月連続プラス

2024.12.27

消費からみた景気指標 24年10月は4項目が改善

2024.12.26

提言論文 消費者が示すサービスブランドの価値実現率-価値伝達なしの生存はない

2024.12.25

24年11月の「全国百貨店売上高」はふたたびプラスに インバウンドや冬物衣料が好調

2024.12.25

24年11月の「チェーンストア売上高」は既存店で2ヶ月ぶりのプラスに

2024.12.24

24年11月の「コンビニエンスストア売上高」は12ヶ月連続のプラスに

2024.12.23

MNEXT 価値と欲望の充当関係とは何か-市民社会の基本原理

週間アクセスランキング

1位 2025.01.20

MNEXT 新たな成長戦略で日本再生へ―トランプ2.0を契機に転換

2位 2025.01.15

月例消費レポート 2024年12月号 消費は足踏み状態が続いている-国内外からの物価上昇圧力は消費にマイナスの恐れ

3位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.06.21

消費者調査データ ビール系飲料(2024年6月版) 首位「スーパードライ」、キリンの新ビール「晴れ風」にも注目

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area