商談が成立するためには、品質や価格、納期などの取引条件だけでなく、売り手と買い手の間に信頼関係が形成されていることが大前提になる。いくら好条件が提示されていても、信頼できない相手とは取引は成立し得ない。
この大前提となる信頼関係が築かれている状態を、「ラポール(rapport)」という。臨床心理学で使われる用語であるが、ちょうど相手と自分の間に心の架け橋が掛かり、互いに信頼し、相手を受け入れている状況を意味する。営業活動だけでなく、円滑なコミュニケーションを図る人間関係の基礎となるものということができる。商談に限らず、日常生活において、自分の損得に合致していたり、道理には合っていたとしても、協力や依頼を断ることがある。こうした場合には、ラポールが形成されていない。
商談の成否を分けるのも、ラポールを形成できるかどうかに掛かっている。特に、初回の訪問時では、最初の15分が鍵を握る。初回訪問時は、自己紹介や会社案内などで導入するケースが多い。こうした話題は形式的には10分もあれば終わってしまうものだが、この導入の段階でいかにラポールを形成するかを意識していないと、次回訪問の機会も得にくくなる。相手の警戒心を解き、好意や安心感を持ってもらうことがポイントである。そのためには、自分や自社を信頼させる情報を提示する、さらに、「営業先のことを考え抜いた価値ある提案」をしてくれそうだと予感させる情報をいかに提示できるかにある。価値ある提案をしてくれそうだと予感してもらうためには、営業先や訪問する相手方をよく調べ、琴線に触れるキーワードやストーリーを練っておくことが必要になる。
こうして相手に伝えるべき情報を事前に準備し、最初の15分の中に折り込んで話すことである。話す際には、相手先への関心の高さ、事業への賛同や好感を、敬意をもった態度で示し、誠意を伝えることが基本態度である。話の伝わり具合についても意識を払い、相手と自分の間に「何らかの共通点」という切り口を作ることが第一歩となる。
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