オーバーストア化するコンビニ | |
しかし、今年に入ってコンビニの店舗数は初めて減少し、資本の撤退または閉店を決定するチェーンが出始めた。中国系企業傘下の「21世紀便利店」(便利店は中国語で、コンビニの意)は、2001年に13億円の資本で上海のコンビニ戦争に参戦し、わずか1年間で上海に575店舗を出店したが、昨年から加盟店の買掛金未支払いによる商品不足が急に目立つようになり、家賃滞納による訴訟問題も絶えない。今年1月には「21世紀便利店」の親会社である上海美亜集団は経営不振の500店舗の閉店を決めた。 中国でコンビニはまだ新しい業態である。ビジネス街と住宅区が高度集中している上海では、スーパーが営業時間を延長し、コンビニを圧迫する格好になっている。一方、商品・サービス面においても、コンビニ本来の「生活に必要なものが一通り揃う(しかし多すぎない)品揃え」「すぐ食べられる食品の品揃えが豊富」「生活をサポートするサービスの提供」といった特徴を充分発揮できず、スーパーとの差別化ができていない店が多い。2004年全店舗の中で黒字経営の店はわずか22%だった。
まず資金の面である。1996年中国に進出した際に、ローソンは、早期の集中出店を予定したが、東南アジアの金融危機が日本経済に与えた影響によって、投資の初期段階に必要な莫大な資金が準備できなかった。 次は中国政府による規制である。中国政府は1999年に外資系の小売業に対しては、直営の店舗しか許可しないという規制を作った。外資によるフランチャイズ出店の禁止である。これはローソンが掲げた500店舗出店計画にとって大きな壁となった。ローソンの場合は、中国進出の草分け企業ということもあり、店舗経営希望者と力を合わせて経営をする「合作方式」を特別に認められており、2004年5月には、加盟店の数は110店舗を超え、総店舗数の65%に達している。とはいえ、フランチャイズ制と異なり、曖昧な部分も多く、ビジネスルールの徹底ができにくい、という問題点もあったようだ。 最後に、ローソンが目指した完全な"日本式経営"は、現地の商習慣と合わなかったことがあげられる。例えば、現在中国小売業界では小売店とメーカーの間では年末リベート制度が一般的に存在している。これはあらかじめ決められた利率で年末にメーカーから小売業にリベートを支払う方法だが、ローソンはこれに強く抵抗した。 2004年、上海ローソンは1996年の第1号店開業から8年経って、ようやく初めての黒字経営となった。その背後には現地の商習慣に従い、年末リベート制を取り入れたのが大きな要因だと言われている。2004年末には、ローソンの上海における店舗数は200を増えた。 ローソン以外にも、ファミリーマートが昨年12月に上海で、セブン-イレブンが昨年4月に北京で、それぞれ1号店をオープンした。 WTO加盟から3年の節目を迎え、2004年12月には外国小売業の進出に関する規制は一部を除き、ほぼ撤廃された。フランチャイズによるチェーン展開の規制が撤廃され、外資100%出資企業の設立も可能になった。また、貿易制限の撤廃は中国の巨大な流通市場の開放をもたらすこととなる。 規制緩和が後押しし、また新しい資本参入により、上海コンビニ業界にはふたつの変化が見られる。ひとつは買収・経営統合など市場再編成の動きが活発化していること。ふたつは、現地コンビニが外資に対抗し、個性化を図るために、競争力のある商品・サービスの開発を始めたことである。 実際、昨年から現地コンビニの中には中国人が好む食べ物、"油条"(揚げパン)を店内で提供しているチェーンや、宅配商品を受け取る際にもカード支払いができる(店頭では以前からカード決済可能)ような設備を投入するチェーンが出てきた。また、情報システムを強化することで、メーカーが毎日ウェブサイトで自社製品の販売及び在庫状況がすぐ分かるようになるなど、情報システム面のてこ入れの動きも目立っている。 上海コンビニ業界は高度成長期が過ぎ、いま成熟・淘汰の時期に入ろうとしている。 (2005.08)
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