半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

中国薄型テレビ事情
楊 亮
 プリント用画面へ(PDF)
 中国市場で、日本と同様に近年薄型のプラズマ、液晶テレビが中国デジタル家電部門の主役に躍り出ようとしている。2005年の上半期の販売台数は74.1万台に達し、昨年同期と比較して260%の大幅増をみせた。液晶が52.2万台、プラズマテレビが21.9万台である。都市部では、薄型テレビの売上台数はテレビ市場全体の43%まで増加した。また薄型テレビの都市部での普及率はプラズマが2.3%、液晶が2.7%となっている。

 中国国内調査会社のデータによると、これから3年間に薄型テレビの購入意向があると答えた消費者は67.7%に上った。そのうち1年以内に購入予定がある人は23.5%を占め、6割は液晶、4割はプラズマを選択すると答えている。最近の都市部の住宅状況の改善とともに、大型の薄型テレビの需要が高まっている。4割以上の人は46インチ以上のプラズマ、5割以上の人は32インチ以上の液晶テレビを購入対象として考えている。


 パネル量産の実現、技術の成熟は外国ブランドと国内ブランドの価格格差が縮まっている主要な原因である。しかし、今年に入ってから中国薄型テレビの値段が著しく低下した原因は、家電量販店主導の値下げ競争によるものだと考えられる。現在家電量販店は都市部の家電・電子製品の主要購入チャネルであり、メーカーに対して非常に強い交渉力を持っている。その結果、2005年上半期では42インチの国産液晶テレビとプラズマテレビの値下げ幅は20%と10%で、それぞれの平均価格は33万円と21万円となっている。
 中国市場は主要な販売時期である10月商戦を迎えている。10月1日の国慶節から7日間の大型連休、年末のモデルチェンジを控えての在庫処分による既存製品の価格低下、また秋には結婚式が多く新生活需要が見込まれるなど、家電・電子製品にとって、10月は拡販に向けて重要な月である。
 中国の薄型テレビ市場全体15.7%のシェアを占める主要メーカーの海信(ハイシン。Hisense)は、国内家電量販店ランキング1位の国美(ゴウメイ。1987年北京で設立した家電の小売店。現在32都市で227店舗を運営する中国家電量販店の最大手。)との提携を決定し、自社製品の42インチの液晶テレビを本来の325,000円から一気に260,000円(19,999元)まで下げ、さらに42インチのプラズマテレビを13万円以下で提供すると9月に発表した。海信、国美の提携による大幅値下げは他の国内メーカーに大きな影響を与えるものと考えられる。

 中国市場では、国産メーカー以外に日本のシャープ、ソニー、松下、日立、韓国のサムスン、LG、オランダのフィリップスなど現地合弁会社で生産される外国のブランドが数多く存在する。価格格差が縮小する中で、日系ブランドは比較的高価格でハイエンド路線を維持するために、新しい製品を市場投入し、技術面で中国メーカーとの差別化を図る戦略を採っている。たとえば日立は最近、今後中国国内でのプラズマテレビの生産を105万ピクセルのXGAディスプレー搭載の高輝度プラズマテレビに集中すると発表した。現在中国市場での一般的なVGAディスプレーは40万ピクセルに過ぎず、高画質の番組を出力できないため、市場では準高輝度プラズマテレビと呼ばれているが、それらとの明確な差別化を図る狙いである。

 外国メーカーは、北京、上海、広州など大都市ではブランド価値が高く、依然として市場シェアを保っているものの、国内メーカーは既存の全国展開しているCRTテレビ販売チャンネルを通じて認知度を上げている。現在中国の薄型テレビ市場において国内ブランドのシェアは67.2%で、外国ブランドを超えている。特に液晶の場合、国内メーカーは77.9%を占めている。

中国消費者が購入したい薄型テレビブランドの順位
 中国国務院発展研究センターと中国電子商会が共同で行った2005年消費者アンケート調査結果によると、消費者は外国ブランドより、国産ブランドを優先的に選択していることがわかる(右表)。液晶テレビにおいては、上位は全て中国メーカー、プラズマテレビにおいても、日本の松下、韓国のLGが4、5位に入ったものの、上位3社は中国メーカーが占めている。値下げが目立つ国内メーカー製品が支持を集めている結果である。

 日本と同様に、家電量販店主導の激しい値下げ競争は短期的に拡販を促進する効果があるものの、メーカーにとって収益悪化、市場の不安定などが懸念される。中国政府機関はいま過度な値下げ競争を避けるように各家電量販店、メーカーに呼びかけている。

(2005.10)

お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area