経済の減速で、転換期を迎える中国小売業界 | |
楊 亮 | |
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中国連鎖(チェーン)経営企業協会が発表している2012年の中国チェーン企業トップ100社についてみてみる。トップ3の蘇寧雲商、百聯集団、国美電器は、売上規模が1,000億元を超えている(図表1)。その中で蘇寧雲商が2年ぶりにトップに返り咲いた。家電量販がトップ3に2社ランクインしているように、中国における家電市場の成長具合がうかがえる。 図表1.中国チェーン企業小売トップ10社
![]() 出所:中国連鎖経営協会HP
![]() 2000年からのチェーン企業トップ100社の年平均伸び率は25%を記録してきた。しかしこの2年間はチャネルの多様化、および消費者の消費習慣の変化の影響を受けて、成長率は明らかに緩やかなものに変わってきた。特に家電産業に関しては、中国政府は2007年12月から一連の家電購入補助策の実施の恩恵を受けてきた。農村の家電普及を後押しする「家電下郷」や、省エネ家電の購入補助などの政策によって市場は急速に拡大したが、反面早くも飽和状態になったとも考えられる。2013年に入ってから、これらの政策が次第に打ち切られたことで、家電量販をはじめとする中国チェーン企業も高度成長期を経て、これから安定成長期に突入していくと予測できる。 ![]() 日本企業では、イオンとイトーヨーカドーの2社がランクインしているが、まだまだその売上規模と店舗数は小さい。中国との国家関係は不安定ながらも日本の国内市場の飽和と中国市場の規模と成長性からも中国進出は今後の欠かせない成長エンジンでもある。 図表2.中国チェーン企業トップ100社における、外資系小売トップ10と日本の小売業
![]() ![]() 2012年トップ100社の中で、ネット販売を展開しているのは62社。2011年より6社増加した。この62社のうち、ネット販売規模が1億元を突破した企業は9社ある。近年ではネット通販企業も急速に成長しており、今後は既存の小売業との激しい需要獲得競争になっていくことが予想される。 ![]() 中国共産党第18回全国代表大会が発表した「収入倍増計画」および「国家就業促進計画」の中では、「2011-2015年の間に、最低賃金は毎年13%以上増加」と定められている。そして、2002年から2005年までの間は、中国小売市場が全面的に開放された時期で、この期間に出店した企業は10年間の賃貸契約を結んでいることが多く、今後2年間でそれらの店は賃貸契約の更新を迎える。企業にとって、コスト削減による利益維持は大きな課題である。 依然としてそのポテンシャルの大きさから魅力的な中国市場であるが、経済の減速をはじめ、出店関連の法規制やそれに伴うコスト負担の増加など小売業を取り巻く環境は厳しくなっている。2012年の上位企業の売上と出店状況をみても、企業や業態間の格差がうかがえる。拡大が続くのか、また再編淘汰に向かうのか、中国の小売市場は大きな転換点を迎えている。 (2013.10)
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