半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

中国におけるコンビニ業態の現状
‐石油関連会社の進出が加速
楊 亮
 コンビニエンスストア(以下コンビニ)は中国で「便利店」と呼ばれている。中国最初の便利店は新しい業態として、1987年広州市で地元資本により誕生した。以降四半世紀を経て、現在では中国全土で約6万6,000店舗(トップ44社の合計)の小売業態にまで成長した。
 2013年9月に中国チェーン企業協会は、2012年中国コンビニ企業トップ44社を発表した。外資系としてもっとも早く中国市場に進出したセブン-イレブンは、1,732店舗で7位にランクインしている。他にランクインした日系企業は、ファミリーマート(14位、1,008店舗)、ローソン(28位、362店舗)である。

日系企業の動き
図表1.中国コンビニ企業トップ10社
出所:中国チェーン企業協会HP
 セブン-イレブンは、北京・天津(2004年進出)、成都(2011年)では、セブン-イレブン・ジャパンの直接投資(子会社)で店舗を展開、上海、広東はフランチャイズ運営である。運営企業は、上海地区が、セブン-イレブンの台湾地区運営権を持つ「統一超商」(台湾系企業、2009年中国本土進出)、広東(香港マカオを含む)が、香港怡和集団(Jardine Matheson)傘下のDairy Farm International Holdings Ltd.,(1992年国内進出)である。2012年2月末現在、セブン-イレブンは、広東では約600店舗、北京・天津で約200店舗、上海、成都でそれぞれ約100店舗となっている。

 ファミリーマートは、2004年に上海に進出、その後広州、蘇州と杭州に店舗を展開している。2011年、「康師傅」などを傘下に持つ台湾頂新グループが、「ファミリーマート中国」の株式の59.65%を取得し、日本ファミリーマートと台湾ファミリーマートに代わって、実質的に「ファミリーマート中国」の運営権を獲得した。2012年2月末まで、ファミリーマートの800店舗のうち、約640店舗は上海に集中し、上海でもっとも多い店舗数を展開している外資系企業である。同社は2012年6月に成都に進出。今後、北京、武漢、深センなどへの展開を計画している。

 ローソンは1996年、上海百聯グループと合資会社「上海ローソン有限公司」を設立、97年に1号店を出店した。2004年に経営現地化のため、「上海ローソン」のローソン持分比率を49%まで下げたが、2011年には85%に引き上げ、再び経営権を取得した。ローソンは中国進出は早かったものの、上海292店舗、重慶70店舗、大連13店舗、北京3店舗(2013年9月末現在)と出店スピードは比較的ゆっくりだったが、2012年に「ローソン中国投資有限公司」を設立、上海ローソンを傘下におさめ、重慶、北京などでも地域の投資子会社を通じて積極出店を図る考えだ。

中国石油会社の参入
首位中国石化販売有限公司の「易捷」
 今回のランキングのトップ2は、国内でガソリンスタンドを経営する「中国石化販売有限公司(以下中石化販売)」と「中国石油販売公司(以下中石油販売)」である。2社の出店数は、合わせて約3万4,000店と、中国全土のコンビニ店舗数の約半分を占めている。
 トップの中石化販売は、非石油製品の事業開発戦略として2008年にコンビニエンスストアに参入した。消費者の多元化したニーズを満たすには、非石油製品事業の開発が必要だと判断したからである。海外同業者のノウハウを吸収し、「易捷便利」というブランドを打ち出した。中国全土で自社経営のガソリンスタンドに併設、運営・管理モデルを統一して展開している。同社の2012年決算報告書によると、非石油製品事業の売上が110億元、5年間で売上10倍という飛躍的な成長を遂げた。しかも中石化販売は中国国内21省で、3万800店のガソリンスタンドを経営、コンビニ出店の余地はまだ大きいと推測できる。
 しかし、1店舗あたりの販売力を見ると、1万9,200店舗に対して、非石油製品事業の売上は82憶6,000元で、単店の1日当たりの売上は、1,195元(2万円未満)という計算になる(2011年決算報告書)。他社のコンビニの売上、6,000元(約9.6万円)と比較して1/5程度にとどまっている。

 2位の中石油販売は、2011年に自社経営のガソリンスタンド1万9,000店のうち1万軒あまりに「崑崙好客」を出店し、2011年の非石油製品事業収入は64億1,000元である。

 中国の国内高速道路網の総延長は9万5,600キロに達している(2012年)。今後も自動車人口はさらに増加するとみられ、ガソリンスタンドコンビニの利用人口も増えると予測できる。ガソリンスタンドへのコンビニ併設は、既存店舗の資源を活用することで、新たな店舗賃貸料や人件費が不要のため、低コストでの出店が可能である。さらに、伝統的なコンビニの経営と比較すると、一部の地域で慣行となっていた「進場費」(サプライヤーが小売チェーンに商品を供給する際に、小売チェーンに払うリベート)、「上架費」(棚代)などのリベートが不要のため、メーカーにとって取引条件が良いというメリットがある。今後、中石化販売と中石油販売は、このメリットを活かして、メーカーとともに顧客が魅力を感じる商品の開発を通じて売上をどう伸ばすかが事業拡大のカギである。
(2013.11)







お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area