半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

「走出去」-中国企業の海外進出
楊 亮
図表図表1.2008年~2012年中国対外直接投資金額推移
(金融類・非金融類合計)
 「走出去」(中国語発音:ゾウチュチィ)とは、中国政府が打ち出した中国企業による海外投資戦略のことである。1980年代から実施してきた外国資本導入戦略「引進来」(インジンライ)に対する言葉である。これは「第11五カ年計画(2001~2005年)」から始まったのもで、直接対外投資の増加、製品の多様化、海外市場における中国企業のブランド力の向上などを狙いとしている。
 この戦略がスタートしてから、中国の直接対外投資が着実に増えている(図表1)。

図表2.2012年中国と世界主要国・地区
対外投資フロー比較
 2013年9月中国商務部が公表した「2012年度中国対外直接投資統計公報」によると、2012年度の中国対外直接投資額は前年比+17.6%の878億ドルと史上最高水準に達し、米国と日本に次いで、初めて世界三大対外投資国のひとつになった(図表2)。2012年末時点では、海外における中国企業は2.2万社弱、進出先は179の国と地域に及んだ。対外直接累計額は5,319億ドルで、資産総額は2兆3,000億ドルを超えた。

図表3.2008年~2012年海外における中国企業の
買収・合併金額
 「走出去」戦略の背景には、国内市場の飽和と過剰競争を強いられた企業の、市場・資源の獲得、そして付加価値が高い製品を製造するために必要とする技術の獲得というニーズがあるからである。買収・合併は市場・技術を獲得するために最も効率がいい手段とされるため、中国企業は近年海外で積極的に買収・合併を行ってきた。同公報によると、2012年、中国企業による対外投資買収・合併プロジェクトは457件、実行取引高は434億ドルで、いずれも史上最高水準を記録した(図表3)。

図表4.2012年主要業種別
中国対外直接投資フロー状況
 同公報によると、中国対外投資業種がリース業と商務サービス業、金融業、採鉱業、卸売と小売業、製造業、交通運輸業・倉庫と郵政業、建築業などの分野に集中していることが分かる。これら業種の投資額が803億ドルで、年間投資額フローベースの約91%を占めている(図表4)。

 近年、人民元高で対外資産に割安感が広がっていることもあり、中国企業の対外投資業種はさらに広がっている。特に不動産分野において、中国企業による欧米での大型不動産買収が相次ぎ、バブル期の日本企業を彷彿とさせる勢いである(図表5)。

図表5.直近中国企業による海外投資案件


 中国企業の対外投資はまだスタートの段階に過ぎない。企業の経験も少なく、その上に対外投資のリスクに対する認識が欠けている。

 中国企業にとって、真の国際企業になるためには、今後各分野に関する専門人材の育成、投資対象国の経済制度、社会および文化への理解と貢献、企業イメージの改善など課題解決が、避けて通れない。

(2014.02)





お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area