錦糸町は墨田区を代表するエリアです。墨田区は人口27万5,000人、人口増加率は101.1%と成長する東京都内のなかでも特に伸びています。墨田区は昼夜間人口比49.8%、小売業の年間商品販売額2,883億円と、住宅街と商業地域の両方の側面を持つエリアであり、錦糸町にはそういったふたつの特徴がよく表れています。
エリアマーケティングを展開するには、墨田区のように成長する市区町村を見極め、錦糸町のような代表的なエリアを抽出し、その特徴を見極めて、集中攻略していくことが必要です。錦糸町を攻略することで、商業施設に来店する若者層と、そこに住み始めたファミリー層の両方を獲得することができます。進化している錦糸町は東京のエリアマーケティングを行う上でも重要なエリアです。
錦糸町といえば、都内屈指の歓楽街。多くの人は、場外馬券場や風俗店が密集するディープなイメージを持っていると思う。今は規制により、ずいぶんクリーンになったものの、競馬新聞片手に白熱しながら昼飲みするおじさんたちは今なお健在。そんな、決してポジティブイメージではない錦糸町が、最近なぜか若者に注目されているというのだ。
最新版の「関東の住みたい街ランキング」では、「今後注目の街」にも選ばれている。その理由のひとつがアクセスの良さ。東京と千葉を結ぶ大動脈JR総武線が通る錦糸町駅は、千葉の若者にとっては最初に遊びに行く東京の街なのだそうだ。渋谷や新宿といった東京の繁華街は、人混みも多く"こわい"という印象が強いらしく、千葉県内で生まれ育った若者には、どうやらハードルが高すぎるようだ。
その現象は、コロナ禍も相まって、さらに加速。錦糸町は今、千葉の若者たちで溢れているのである。かくいう駅周辺には、「オリナス錦糸町」や一昨年、駅前にオープンした「PARCO」など、買い物に便利なショッピング施設も揃っているので、千葉の若者は新宿や渋谷まで足を延ばさずとも錦糸町で充分ことたりるというわけだ。そして、錦糸町でしっかりウォーミングアップできた若者は、JR総武線と接続している東京メトロ半蔵門線に乗り、晴れて渋谷デビューとなるのだ。
また、近年の再開発で高層マンションの建設ラッシュも絶賛進行中。アクセス抜群で便利な下町は、千葉の若者はもちろんのこと、引っ越し先を考えているファミリー層にも注目されているのである。そのわけは、重複するが駅周辺にショッピング施設が充実していることが大きい。そのひとつ、錦糸町そごう閉店後、2002年に再開業した大型ショッピングセンター「アルカキット錦糸町」には、なんと国内最大級の広さと品ぞろえを誇る100円ショップの「ダイソー」がある。
錦糸町には、丸井とオリナス内に「セリア」もあるが、アルカキットの「ダイソー」は比較対象外。なんてったって、街も都も超えた規格外の規模なのだ。錦糸町界隈で新生活を始める人にとって、アルカキットのダイソーは、もはや神そのもの。ここに来れば、家具と家電以外のものはほとんど揃ってしまうのだ。
店内に昨年オープンした300円ショップ「スリーピー」には、レゴブロックや幼児用椅子などといった子供向けグッズも大充実。広さが国内最大級ということは、当然そこに陳列している品数も最大級なわけで、場所をとる収納用のプラスチックケースなんかもとんでもない品ぞろえになる。そんなわけで、錦糸町のアルカキット7階にある100円ショップ「ダイソー」は、全国トップレベルの売上を誇る。だから、その品揃え最大級のダイソーがある錦糸町が住みたい街ランキングで注目の街に選ばれるのも、必然というわけなのである。
そして、近年の若者急増の立役者といえば、2019年3月にオープンした「PARCO」。1階にある墨田区の有名店や都内の人気店が集結する「すみだフードホール」は特に注目のフロアだ。お勧めをいくつかあげると、のん兵衛の私がまず目をつけたのが、千葉を中心に展開する酒屋「IMADEYA」。その品ぞろえもさることながら、バーカウンターを設けた角打ちにもなっている。「二代目 野口鮮魚店」は、墨田区本所に店を構える海鮮丼が有名な行列店の分店。人気メニューの「豪快ブツ切り15種大漁丼」は、本マグロ、カニ、いくら、甘えび、勘八など15種類の海鮮が豪快に盛られて1,980円。安くはないが、ボリュームや鮮度を考えたら、絶対に食べる価値アリ!な一軒だ。
また、ここには錦糸町で一番人気のラーメン店も入っている。その名も「真鯛ラーメン麺魚」。店の代名詞である愛媛県宇和島産の真鯛のアラでとった出汁、北海道産小麦100%の石臼挽き全粒粉で作った麺、桜で燻した真空低温調理のチャーシューからなる「真鯛ラーメン」は、ヘルシーで美味しいと女性ファンも多い逸品だ。さらに、ステーキ好き、肉好きにはたまらない名店も出店。特許を取得している「駄敏丁カット」で知られる墨田区東向島のステーキと洋食の名店「レストラン カタヤマ」の味も、ここでなら気軽に味わえる。本店は駅からちょっと離れているので、地元民以外の人は少々行きづらいという点もPARCO店なら難なくクリア。ここの肉厚な赤身肉ステーキを食べたら、他では食べられないという人続出の破格の旨さが堪能できる。
緊急事態宣言中で、残念ながら一部のお店は休業中。こんなご時勢じゃなかったら相当賑わっていただろう、などと頭を巡らせながら「二代目 野口鮮魚店」のランチを味わうことにした。本当はおススメの「豪快ブツ切り15種大漁丼」といきたかったが、ひっそりとしたフードホールで、やけに豪華な丼を一人でモリモリ食べるのは少しばかり抵抗があったし、なにより食べきる自信がなかったので、悩んだ挙句100円安い人気NO.3の「うまい丼」にした。ウニ、イクラ、本マグロがどっさり乗って1,880円。本マグロは、赤身、中トロの刺身のほか、串刺しの炙りまで乗っている。ボリューム的には大漁丼とほぼ同じようだが、好きなネタだけ集中して食べられるのが、いい。結局、美味しすぎてペロッと平らげた。ネタの鮮度はもちろん、最後まで飽きさせないバランスも絶妙だし、コスパもいい。是非一度味わって欲しい逸品だ。
最後に、あるコアなファンから一目置かれているとっておきのスポットをご紹介。
実は錦糸町は、サウナーの間ではかなり知られるサウナスポット。昨今のサウナブームも手伝い、その人気は鰻登りだ。「楽天地スパ」は、錦糸町のシンボル「楽天地」の中にある男性専用サウナ。1時間に1度行われるロウリュや楽天地名物の背中流しが魅力。そして、120度の超高温ドライサウナが名物の「サウナ錦糸町」では、新たな試みで話題を集めている。ビル看板はかなり年季が入っているが、昨年8月には屋上にセルフロウリュができるサウナ小屋と水風呂プールの他、BBQまで楽しめる「サウナガーデン錦糸町」をオープン。1日貸し切りプランなら、家族やグループなど10名まで70,000円で満喫できる。
さらに、今年3月には、1日1組限定のルーフトップVIPサウナスペース「The錦糸町」をオープン。ウォールナット調のラグジュアリーな小屋に入りフィンランド直輸入のセルフロウリュで汗をかいたら、スカイツリーを眺めながら外気浴でクールダウン。焚火の音を聞きながら広めの五右衛門風呂でリラックスした後は、なんと、寿司職人が目の前で寿司を握ってくれる。完全プライベート空間で、そんな極上の"ととのい"を楽しめて一人25,000円。コロナ禍で溜まったストレスを発散できるなら、決して高くない気がするのは、私だけだろうか・・・。
今回訪ねた街はコチラ!
著者プロフィール
赤沢奈穂子
放送作家。
日本脚本家連盟、日本放送作家協会会員。
コピーライターから放送作家に転身後、日本テレビ「11PM」でデビュー。番組における最初で最後の女性作家に。テレビ、ラジオ、イベントなど数々の番組等に関わり、1993年渡米。NY、イスラエル、ロンドンでの約7年の居住を経て帰国。その後は、番組構成をはじめ、雑誌ライター、書籍の執筆、イベント運営など、幅広く活動している。既婚。2児の母。東郷奈穂子名義でも活躍中。
コピーライター作品「フルムーン旅行」
放送作家作品「テレビ東京/出没!アド街ック天国」ほか
近著に、萩谷慧悟ダイビングフォトブック「HORIZON」(2021)、「Azure Blue」(2022)、小西成弥フォトブック「treasure」(2022)など
連載:気になるあの街に行ってみた!
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参照コンテンツ
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- MNEXT 眼のつけどころ 20年後の東京をどうするか?―新しい消費文化の形成(2017年)
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シリーズ「移動」のマーケティング
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- 変わる家族と駅の役割
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