2013年のアベノミクスによる「景気上昇局面」から一転、消費税増税や生活用品の相次ぐ値下げなどによる消費低迷など先行き不透明感が漂う日本経済。こうした時代の空気を反映した生活者の印象に残る「出来事」「人物」「歌」「商品」という四つの切り口から、J-marketing.net的に整理する。なお、回答はすべて「自由記述」で、ひとりが複数回答している場合もある。
印象に残った出来事
1位は有効回答ベース(以下、同様)で15%を集めた「御嶽山の噴火」である。長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山が9月27日に噴火した。近年の登山人気や紅葉シーズンの土曜日ということで、死者57名、行方不明者6名(12月2日現在)という戦後最悪の人的被害となった。現在は、山頂付近での積雪などにより二次災害の危険性もあり、大規模な捜索は打ち切られており、再開は2015年春以降の見通しとなっている
2位はSTAP細胞騒動である。再生医療等への貢献の可能性が大きいと期待されたこともあるが、発表者のひとりである理化学研究所の小保方晴子氏が若い女性研究者であったこともあり、大きな注目を浴びることになった。つまり2010年くらいから使われ始めていた「リケジョ(理系女子)」を象徴する存在としてメディアの格好のネタとなった。しかし、論文の発表直後から、追試実験が成功しないことや論文の記載に多くの不備があることが指摘され、7月には論文が撤回された。現時点でもSTAP細胞の存在は科学的に証明されないまま、忘れ去られようとしているのが現状である。
3位は突如年末に実施されることになった「衆議院解散と総選挙」で、4位はその争点のひとつでもある「消費税の増税」である。安倍晋三首相は、任期を2年以上残した時点での衆議院解散について「消費税を2015年10月から現行の8%を10%に引き上げる時期を1年半延期することとアベノミクスの是非について国民に問う」という大義を掲げているが、当の国民の納得が得られているとはいえない状況である。しかし否応なく選挙は実際され、その結果は2015年以降の生活に大きく影響を及ぼすことが予想される。
印象に残った有名人
1位は俳優の「高倉健」である。日本を代表する映画スターであることはもちろん、本調査の直前11月10日に亡くなったことで各種メディアが集中的に取り上げられたことも大きく影響している。11月28日には、同時代を生きた「菅原文太」も亡くなった。高倉健は「網走番外地シリーズ」、菅原文太は「仁義なき戦いシリーズ」という代表作があり、1960年代の東映の任侠映画を象徴する映画スターの相次ぐ死去は、「昭和の時代」がまたひとつ消えていくという思いを多くの人に抱かせたと思われる。
2位はテニスプレイヤーの「錦織圭」である。7月の全米オープンでは準優勝に終わったものの、4大大会シングルスにおいて日本人初のファイナリストとなるなど、世界ランキングは5位にまで上昇している。また5位には、フィギュアスケートの「羽生結弦」がランクインした。ソチ冬季五輪での金メダル獲得が2月ということで、印象が薄れてしまった感は否めないが、トップの錦織圭が24歳、羽生結弦は19歳(執筆時点)であり、2014年のスポーツシーンを代表する選手がともに世界を舞台に戦う若い世代ということが、グローバル時代の新たなヒーロー像を象徴しているともいえる。
3位の「日本エレキテル連合」は、「『現代用語の基礎知識』選 2014ユーキャン新語・流行語大賞」において、コントに登場する「未亡人朱美ちゃん3号」の発するセリフ「ダメよ~ダメダメ」が年間大賞に選ばれた。お笑い芸人としては、2012年に「スギちゃん」が「ワイルドだろぉ」で年間大賞に選ばれ、本ランキングではトップだった。日本エレキテル連合の2015年が注目される。
印象に残った歌
1位は2013年に公開されたディズニーアニメ映画「アナと雪の女王」に使用された楽曲「レット・イット・ゴー」。その回答率は73%と圧倒的な支持を得ている。この曲は、英語版に加え、全世界42の言語で歌われており、日本語では、「ありのままで」というタイトルで、エンドロールでは「May J.」、劇中では王女エルサ役の声優として「松たか子」が歌唱している。劇中の場面の影響力もあるが、松たか子の歌唱力が強く印象に残ったという点でも注目された。
2位の「ゲラゲラポーのうた」は、人気テレビアニメ「妖怪ウォッチ」(テレビ東京系)のオープニングテーマである。7月に発売されたニンテンドー3DS用ソフト『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』は、累計出荷本数が11月初旬で300万本(ダウンロード版含む)を突破するなど大型ヒットになっている。歌っているのは、「キング・クリームソーダ」という男女3人組で、この曲のための企画ユニットとされている。アニメの主題歌のヒット曲、企画ユニットという点では、「ちびまる子ちゃん」(フジテレビ系)の主題歌で「B.B.クイーンズ」が歌う「おどるポンポコリン」と共通点がある。年末の各テレビ局の歌番組、さらには「第65回 NHK紅白歌合戦」の出場も決定していることから、ロングヒットになる可能性が高い。
また3位「麦の唄」は、NHKの連続テレビ小説「マッサン」の主題歌である。「中島みゆき」は、NHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」の主題歌「地上の星」(2000年)もロングヒットとなっており、NHKとの相性の良さがうかがえる。
なお、上位3曲はいずれも映画、テレビ番組の主題歌であった。
2014年のヒット商品
2012-2013年と2年続けてトップだったApple「iPhone」は3位にとどまった。トップは、「アナと雪の女王」、2位は「妖怪ウォッチ」の関連商品が約3割弱で3位以下を大きく引き離している。「印象に残った歌」と同じランクであり、このふたつのコンテンツパワーの強さを示す結果といえる。なお、トップ2は、日経トレンディの「2014年ヒット商品ランキング」と同じであった。
3、4位は、スマートフォン関連である。普及率が高まり、iPhoneもほぼ毎年同じタイミングで登場するなど、新商品もこれまでと比較して強いインパクトはなくなっているが、それでも上位を維持している。
トップ10には、5位「レイコップ」(韓国)、9位「ノンフライヤー」(オランダ・フィリップス)、10位「ヌードルメーカー」(オランダ・フィリップス)、「ルンバ」(米国・アイロボット)といった家事用の家電製品が四つランクインしている。しかもすべて海外の家電メーカーの商品で、ヌードルメーカー以外は2013年もトップ20にランクインしている。
6位「コンビニコーヒー」(2013年5位)、7位「ふなっしー関連商品」(同14位)も2013年に続いてのランクインである。また、食品カテゴリーでも「パンケーキ」「塩麹」は2013年より順位を落としているが、連続ランクインである。それは、逆にいえば、新たな大型ヒット商品が生まれにくくなっているともいえる。
以上のランキングを通して2014年を総括すると、特徴は三つある。
- ファミリー向けコンテンツパワー(アナと雪の女王、妖怪ウォッチ、ふなっしー)
- 新世代の台頭(錦織圭、羽生結弦)と昭和のおわり(高倉健)
- 新規大型ヒット商品の不在(スマートフォン、家事用家電商品、食品など連続ランクイン)
消費税増税から想定された回復の遅れもあり、さらには年末の衆議院解散と総選挙と、2013年の下期からの景気回復感にブレーキがかかっている。2015年は、これまでになかった新規の大型ヒット商品の登場に期待したい。
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- 【調査設計】
- 調査手法:インターネットリサーチ
- 調査期間:調査期間:2014年11月21日~26日
- 調査対象者:当社インターネットモニター 20歳~69歳 全国の男女個人
- 有効回収サンプル数:1,009サンプル
サンプル構成(%)
- 調査期間:調査期間:2014年11月21日~26日