値上げの波が押し寄せるなか、100円ショップに代表される低価格チャネルに注目が集まっている。100円ショップは店舗数、市場規模ともに拡大基調にあることをうけ、今回は100円ショップについて利用実態を調査した。
まず、100円ショップ(300円程度の均一価格ショップを含む)の半年内利用率は68%となっている。これは、ドラッグストア、コンビニエンスストアに次いで3番目に高い結果で、今後の利用意向も63%と1位のドラッグストアに匹敵する結果となった(図表1)。これを見ると、100円ショップはドラッグストアやコンビニエンスストアに並んで利用率の高いチャネルになりつつあるように思われる。しかし、利用頻度には大きな差があった。100円ショップの利用頻度は月1日未満が6割を超えている。週3日以上利用者は1.7%にとどまっており、他のチャネルに比べて大幅に低かった(図表2)。
また、100円ショップの店舗別の利用状況をみると、ダイソーの半年内利用率は8割にのぼる。半年内利用率、今後の利用意向もダイソー、セリア、キャンドゥの上位3店舗と他企業で大きく差がついている(図表3)。このことから、100円ショップは上位集中の進んだ業態であることがうかがえる。
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次に、どんな人が100円ショップを利用しているのかを見ていく。性別では、女性のほうが月1日以上利用率が若干高い結果となっており、特に女性30代、40代、60代で利用率が45%程度の高い値となっていた。男性でも60代では利用率が高かった。一方で、20代の若い年齢層では、男女ともに利用率が低くなっている(図表4)。
また、100円ショップの利用率に関連がありそうな世帯年収をみると、年収1,000万円を超える層でも月1日以上利用率は3割を超えており、他の年収層と比較してとりわけ低いということはなかった。(図表4)
次に、100円ショップの利用頻度によって意識や属性にどのような違いがあるのかを見ると、100円ショップを週1日以上利用する層では、「買い物に楽しさを求めるほうだ」という意識を持っている。一方で、100円ショップの利用頻度がやや低い月1日以上利用する層(週1日以上利用する層は除く)では「節約のために特売品やポイントを利用する」に対する賛成率が高い(図表5)。また、このふたつの層の属性を見ると、週1日以上利用者では20代、大都市郊外・政令指定都市居住者が多く、月1日以上利用者では60代、地方都市居住者が多いという、若干の差が見られた(図表6)。
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続いて、100円ショップでの購入実態を大型総合スーパー、食品スーパー、コンビニエンスストアの三つと比較しながら
見ていく。100円ショップでは平均購入金額は600円程度、購入個数は4個程度となっており、他のチャネルよりも低い。購入商品としては、文房具、キッチン用品、掃除・洗濯用品が中心だった(図表7,8)。
次に、お店に入る前は購入する予定がなかった商品を買う「計画外購入」率は、100円ショップでは約6割だった。計画外購入のタイプは、「買う予定だった他の商品と関連のある商品が目について買った」が他のチャネルよりも高い(図表9,10)。100円ショップの低価格かつ豊富な品揃えは計画外購入を引き起こす一因になっていると推測していたものの、大型総合スーパーや食品スーパーのほうが、店頭で必要性を思い出すことを起点とした計画外購入が多い結果となった。
各チャネルに対する満足度をみると、100円ショップでは68%となっており、大型総合スーパー、食品スーパーとほぼ同率であった(図表11)。100円ショップの主な満足点としては、「商品の価格が安い」がもっとも賛成率が高く、63%だった。次いで「商品のコストパフォーマンスがよい」が3位以降と大きく差をつけて並んでいる(図表12)。このことから、100円ショップの最大の魅力はやはり「低価格」にあることがうかがえる。
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最後に、100円ショップの今後を消費者の側から見ていく。100円ショップの今後の利用意向は6割と高く、属性別に見ると、女性40代~60代では7割を超える結果となっている。さらに、100円ショップの利用頻度が高いほど今後の購入意向も高く、月1日以上利用する層では今後の利用意向が8割を超えており、ロイヤルユーザーを獲得していることがわかる(図表13)。100円ショップを週1日以上利用するヘビーユーザーでは、「商品の価格」に次ぐ満足点が「買い物が楽しくなる売り場である」ことになっている(図表14)。また、100円ショップヘビーユーザーは、平均購入金額や計画外購入率、さらに満足度も、利用頻度の低いユーザーよりも高くなっている(図表15)。
1ページで見たように、100円ショップは上位集中が進んでおり、ダイソー、セリアでは半年以内利用者の今後の利用意向における歩留まりは9割を超えていた。上位企業ではこうしたヘビーユーザーを取り込むことに成功しているように思われるものの、業界全体として低単価かつ新規参入も相次いでおりこれまでの成長を維持できるか先行きは不安である。値上げの時代に「100円」という低価格は消費者の目に魅力的に映るとはいえ、業界内での生き残りのためにはヘビーユーザーに評価されているような「買い物の楽しさ」を高めていく必要があるのではないだろうか。
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- 100円ショップの半年内利用率はコンビニに匹敵
- 女性30代・40代を中心に幅広い層に利用される100円ショップ
- 価格に最大の強みを持つ100円ショップ 計画外購入は多くない
- 100円ショップでの買い物を楽しむヘビーユーザー
* 業界クリップ 2022年11月(全7頁)
- 消費者の動き 【訪日客数に回復の兆し】
- 売れている食品・メニュー 【中国向けの日本酒輸出が好調】
- 東京市場 【恵比寿ガーデンプレイスのセンタープラザ】
- 地産地消 【米子市で「牛骨ラーメン同盟」が誕生】
- 食品企業の経営 【スシローの2022年9月期決算】
- 製品開発 【ガストが初のコースメニュー】
- 価格政策 【円安傾向が落ち着きの兆し】
- プロモーション 【ブラックフライデー商戦】
- チャネル政策・チャネル動向 【コンビニが省人化を強化】
- ヘッドラインクリップ 2022年11月の動向
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