農林水産省が公表している「チーズの需給表」によると、国内のチーズの消費量は2014年から増加傾向にある。コロナ禍においても健康志向の高まりや家呑みの拡大にともない、チーズの需要が高まったのではないだろうか。そこで今回はチーズに着目し、誰がどのような目的で食べているのか調査をおこなった。
まず、チーズが好きと答えた人は全体の7割以上と非常に高い結果となった(図表1)。実際に、チーズを週1日以上食べる人は4割以上だった(図表2)。また、チーズを食べる頻度を今後増やしたいと答えた人は2割となっており、今後もニーズは伸長していくと考えられる(図表3)。
さまざまな基本属性の中で、チーズを食べる頻度に特に差があったのは性別・年代で、女性30代、50代、60代では週1日以上食べる人の割合が高くなっている。その他にも生活レベルの高い人、脂質などのコントロール意識がある人ほど、チーズをよく食べていた。特にお酒とチーズの消費には強い関連があり、週に4日以上お酒を飲む人では、6割がチーズを週1日以上食べている(図表4)。こうした飲酒頻度の高い層は男性40代~60代で多かった(図表5)。
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チーズの形状別に浸透状況をみていく。もっともよく食べられているのはスライスチーズで、全体の2割が週に1日以上食べている。次いで、6Pチーズ、ベビーチーズが続いている。1年前と比較して食べる頻度がもっとも増えたものは、パンなどに塗るチーズスプレッドだった。今後(も)食べたいチーズとしては、スライスチーズがもっとも高く5割を超えている。6Pチーズやピザ用チーズのような刻まれたシュレッドチーズも高く、約4割となっている。一方で、チーズスプレッドやその他のブロックタイプのチーズなどは15%前後と低めである(図表6)。
スライスチーズやシュレッドチーズなどを中心とした、直近で食べたチーズについて購入・利用実態をみていく。購入場所は、食品中心スーパーがもっとも多く、次いで大型総合スーパーとなっていた(図表7)。購入金額をみると、200円未満の低価格のチーズを買う人がボリュームだが、500円以上の比較的高価格のチーズを購入する人も2割いる(図表8)。チーズを食べるシーンは朝ごはんや夜ごはんのときが中心となっており、このふたつのシーンで約5割を占める。お酒のつまみにした人も約2割いた(図表9)。
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チーズを食べる理由をみていくと、一番の理由は「味が好きだから」で約5割。次いで、「手軽に食べられるから」「カルシウムを摂取したいから」となっている。これらのさまざまな理由を「健康」「味・食感」「使いやすさ」「ぜいたく」の四つに分類し、それぞれの関連をみてみると、 「ぜいたく」と「味・食感」 、「使いやすさ」と「味・食感」はニーズの重なりが大きいことがわかった。一方で、「健康」と「ぜいたく」は相対的に重なりが小さい(図表10)。
四つのニーズを性別・年代別にみると、女性60代は「健康」「味・食感」「使いやすさ」がいずれも特徴的に高かった。「ぜいたく」ニーズは男性20代でもっとも高くなっている。一方で、男性30代は「健康」、男性40代は「味・食感」で全体との差が大きく、年代によるニーズの違いが目立つ結果となった(図表11)。
続いて、ナチュラルチーズの浸透状況をみていく。ナチュラルチーズの中では、カマンベールチーズがもっともよく食べられており、全体の2割強が1か月以内に食べていた。これに対して、「ぜいたく」ニーズのある人では5割弱がカマンベールチーズを1か月以内に食べていた。その他のナチュラルチーズも「ぜいたく」ニーズがある人ほどよく食べており、嗜好品としてのチーズの側面がうかがえる(図表12)。
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冒頭で確認したように、今後チーズを食べる頻度を増やしたいという人は約20%おり、減らしたいという人を大きく上回っていることから、チーズの消費は今後も増加していくと思われる。特に増加意向が高いのは、女性30代、女性60代の、現在もチーズを高頻度で食べている層である。また、前ページで分類したチーズのニーズごとにみると、「ぜいたく」ニーズを持っている人で増加意向が特に高く、4割がチーズを食べる頻度を増やしたいと感じている(図表13)。
続いて、食意識別にチーズを食べる頻度の増減意向をみると、「食事で日常生活を充実させたい」「話題の食べものは積極的に食べてみる」という意識が強い人ほど、増加意向も高くなっていた(図表14)。さらに、これらの意識をどのような人が持っているのかをみてみる。「食事で生活充実」意識はチーズを食べる頻度を増やしたいと感じている女性30代や女性60代で強く、「話題の食べものを食べる」意識は男性20代、女性20代で強くなっている(図表15)。
ここまでみてきたように、チーズはその種類の豊富さによって「ぜいたく」ニーズをはじめとする人々の多様なニーズを満たせる食べ物である。そのため、性別・年代問わず幅広い層に食べられており、一過性のブームではなく日常に入り込む食べものとして、今後も伸長していくと推察される。
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- 日本人の4割はチーズを週1日以上食べている
- 定番はスライスチーズ
- さまざまなニーズを満たせるチーズ
- ぜいたくニーズに支えられ、今後も伸長が見込める
* 業界クリップ 2023年2月(全7頁)
- 消費者の動き 【消費のマイナス続く】
- 売れている食品・メニュー 【コカ・コーラが「プラズマ乳酸菌」の商品投入】
- 東京市場 【東京駅で「ねこの日」イベント】
- 地産地消 【餃子消費量の日本一決まる】
- 食品企業の経営 【ロッテリアの売却】
- 製品開発 【定番ブランドの強化】
- 価格政策 【値上げに鶏卵不足加わる】
- プロモーション 【今年のバレンタイン・恵方巻の動向】
- チャネル政策・チャネル動向 【セブンがクイックコマースを急拡大】
- ヘッドラインクリップ 2023年2月の動向
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参照コンテンツ
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 経験率は4割 内食化と健康志向が後押しする手作り保存食(2021年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 健康志向と「映え」で伸びるチーズ需要(2019年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 若い男性を中心とした、コンビニスイーツ需要の高まり(2016年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸びるコンビニスイーツ、単価をあげるスイーツ男子(2014年)
- 企画に使えるデータ・事実 成長市場を探せ チーズ(2019年版)
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