コロナが明けて需要が戻った健康食品市場だったが、2024年3月に「紅麹サプリ問題」が起こった。そこで、健康食品の利用と、「紅麹サプリ問題」を受けて消費者の行動がどう変化したかを調査した。
健康食品を利用したことがある人は半数近くを占めており、うち1年内購入者は34%であった。属性別にみると、年代や職業、階層意識により1年間の購入率が異なっている。特に、20代、管理職、生活レベルが高い人の購入率が高かった(図表1)。健康意識別にみると、やはり健康意識が高い人ほど購入していた(図表2)。
購入経験者の購入理由をみると、「不足している栄養素の補給」が65%と高く、購入率の高い20代男性では、「不足している栄養素の補給」のほか、「免疫力向上」「体力、持久力の維持、向上」「生活習慣病の改善」「美容効果の期待」が高く、20代女性は「不足している栄養素の補給」のほか、「美容効果の期待」「生活習慣病の改善」「ダイエット」が理由としてあがった(図表3)。
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2024年3月に発覚した「紅麹サプリ問題」についての認知率は8割を超え、非常に高い認知率であった(図表4)。情報接触度別にみると、TV・新聞・Webなどの情報接触率が高い人ほど原因まで認知している割合が高かった(図表5)。また、年代も原因の認知の差に繋がっており、20代は全体に対して原因の認知率が50%と低い一方、60代は81%と高い結果であった(図表6)。
各メーカーの1年内購入者別にみると、今後の購入意向は小林製薬が他社と比べて低い結果となり、「紅麹サプリ問題」が関係していると考えられる(図表7)。また、健康食品全体に対して不安を感じているのは1年内に健康食品を購入していない人である(図表8)。このことから、健康食品に対して不安を感じている人は、小林製薬だけでなく、健康食品全体に不安を感じていると考えられる。また、健康食品を選ぶ際に、全体では「含まれる成分」を重視していた。問題認知の程度別に重視度変化をみると、特に「製造している企業」「含まれる成分」を重視するようになった人が増加している。「紅麹サプリ問題」を受けて選択重視点が変化したと推察できる(図表9)。
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問題認知後の行動の変化をみてみる。問題認知者において、健康食品の摂取を中止した人は15%、健康食品の種類を変更して摂取を継続したのは11%であり、4人に1人は問題を受けて、健康食品の摂取行動を変化させていた(図表13)。これは全体でみると8.4%にあたり、小林製薬の1年内購入率の2倍超だった。
摂取行動の変化は年代による差と、健康食品への依存度による差が大きかった。特に20代の45%が健康食品摂取の中止または摂取している種類を変更していた。
健康食品依存度は期間(図表10)と数(図表11)から定義して、高・中・低に分けた(図表12)。健康食品の購入経験者が摂取し始めてからの期間は、5年以内が過半数を占めており、10年以上前からも3割以上といった結果であった。健康食品の摂取数は2種類以下が過半数を占めたが、5種類以上も1割以上いるという結果となった。
健康食品の依存度が低い人に比べて依存度が高い人は「紅麹サプリ問題」を受けて健康食品の摂取を中止しており、依存度が低い人は健康食品の摂取を継続していた(図表14)。
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問題認知後の行動として、「紅麹サプリ問題について友人や知人と話題にした」「『紅麹』について検索をした」「利用している食品について改めて情報収集をした」人は過半数を超えていた。年代による差が大きく、20代・30代は特に認知後に行動を起こしていた(図表15最上段)。健康食品摂取の代替行動として、4割以上が野菜を食べたり、野菜ジュースを飲んだり、運動量を増やしたりしており、こちらも年代ごとの差が大きい(図表16)。また、問題認知者かつ各メーカー認知者ごとの信頼度では、提示したメーカーのなかで小林製薬はもっとも低い、27%という結果となった(図表17)。
「紅麹サプリ問題」は86%と非常に認知率が高く、小林製薬に限らず健康食品の中止・ブランドの変更をもたらした。中止・変更者は、小林製薬の購入率の2倍超であった。また、問題を通して、選択重視点が変化していること、代替行動をおこなっている人がいることから、 「紅麹サプリ問題」により健康食品市場が変化したといえる。健康食品の摂取者は健康意識が高く、自ら検索をし、知人と話題にして健康食品の中止などをする。業界全体としてそれぞれの企業が消費者に対して根拠のある情報の提供ができるかどうかがますます重要になっていると考えられる。
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- 健康食品の購入割合は20代が多い
- 「紅麹サプリ問題」認知率は86%!
- 「紅麹サプリ問題」報道後の健康食品摂取行動変更率は25%
- 問題認知後に健康食品購入者の過半数がおこなった「紅麹」の検索
* 業界クリップ 2024年7月(全6頁)
- 消費者の動き 【一転して円高の進行】
- 売れている食品・メニュー 【ゴディバのチョコかき氷】
- 東京市場 【焼肉の名店によるリアル焼肉弁当】
- 地産地消 【人気の祭りとコラボしたご当地商品】
- 食品企業の経営 【マクドナルドでシステム障害】
- 製品開発 【規格外品を活用した商品相次ぐ】
- 価格政策 【外食チェーンによるウナギ商戦】
- プロモーション 【パリ五輪にちなんだ食提案】
- チャネル政策・チャネル動向 【セブン-イレブンが宅配ピザに参入】
- ヘッドラインクリップ 7月の動向
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調査設計
調査手法:インターネットリサーチ調査期間:2024年8月9日~8月10日
調査対象者:インターネットモニター 20歳~69歳
全国の男女個人
有効回収サンプル数:1,139サンプル
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