
2020年1月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内での初感染が発覚して2ヶ月、国内の累計感染者数は866人(3月18日時点)となった。
感染症対策商品が売れる中、マスクや消毒用アルコールなどの品薄は未だ改善の見通しが立っていない。
今回は「食と生活」のマンスリー・ニュースレター特別編として、新型コロナウイルスの発生が生活者の購買行動にどのような影響を及ぼしているのか調査した。
調査票では食品や日用品など41品目を挙げ、「最近3ヶ月以内に購入した」「2ヶ月以降に購入頻度・量が増えたもの」「2月以降に品切れで購入できなかったもの」などについて質問している。
まず、「感染症対策を意識して購入頻度を増やした」商品についてみてみる(図表1)。食品では「インスタントめん」(8.9%)、「米」(6.5%)が上位であった。日用品では「マスク」(12.9%)、「トイレットペーパー」(9.7%)などの衛生関連商品が上位を占めている。
次に、「2月以降買いたかったけれども品切れで購入できなかった」商品についてみてみる。食品では「納豆」(2.2%)や「米」(1.4%)など、「買えなかった」とする回答は多くなかった。一方日用品では、「マスク」(39.3%)、「トイレットペーパー」(14.9%)、「消毒スプレー」(13.9%)など、品薄が叫ばれている商品が上位に入った。
こうした日用品、特に「マスク」は感染症対策ニーズに反して、品切れのため実際の購入には結びついていない様子がうかがえる。
図表1.
ここでは、感染拡大抑制のための施策実施別に、「購入を増やした」品目をみていく(図表2)。
まず、在園・在学中の子供がいる人のうち「子供が休園・休校になった」人は、食品では「インスタントめん」(14.7%)、「米」(12.2%)の購入を増やしていることがわかった。これらの品目は全体と比べても6ポイント程度高くなっており、平日の日中に子供が家にいることで消費量が増えていると考えられる。
日用品で増えているのは「トイレットペーパー」(14.1%)、「うがい薬」(12.8%)が上位で、全体との差はほぼ見られなかった。
また図示していないが、「子供が休園・休校になった」人は、最近3ヶ月以内の「マスク」購入率が47.4%と全体よりも11.3ポイント高い。同様に「アオサなどの海藻類」「納豆」「ヤクルトなどの乳酸菌製品」などの購入率も5~10ポイント程度高い。自身だけなく、家族の体調管理を意識した購入と考えられる。
次に、有職者のうち「テレワーク・在宅勤務を実施している」人についても同様にみていく。食品では「米」(14.3%)がもっとも高く、次いで「精肉、鮮魚」(10.7%)という結果であった。全体と比較すると「米」(全体+7.8ポイント)、「アオサなどの海藻類」(全体+5.4ポイント)で差が大きい。
「インスタントめん」「冷凍食品」などが上位入りした「子供が休園・休校になった」人に比べ、内食傾向にあることがうかがえる。日用品では「うがい薬」(15.5%)がもっとも高い。全体との比較ではマスクで+4.8ポイントと若干高くなっている。
図表2.
消費者の間に予防意識が浸透したことで、衛生関連商品が売れている。また、人混みでの感染リスクを避けるため、企業はテレワークを推進している。今回の新型コロナウイルスをきっかけに、こうした新たな生活様式・働き方が浸透し、中長期的に消費者の購買行動にも変化をもたらすことになりそうだ。
調査設計
調査期間:2020年3月13日(金)~3月17日(火)
調査対象者:当社インターネットモニター
全国の男女個人、20歳~69歳
有効回収サンプル数:1,023サンプル
クロス集計表ダウンロード
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