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「新型インフルエンザ」パンデミック宣言
インフルエンザで進む巣ごもり型消費
 
 2009年5月初旬に国内で最初の感染者の発生した「H1N1」型の新型インフルエンザ、通称「豚インフルエンザ」は、6月11日、警戒のフェーズが最高レベルである「6」に引き上げられ、パンデミックが宣言された。国内では感染拡大のピークを過ぎたとみられているが、感染者の累計は594人と600人に迫り、全世界では2万人に達している(6月15日現在)。
今回対象者の居住地域と感染区分
 今回のネット評判記では、当社インターネットモニターを対象に、「新型インフルエンザ」への意識や対策をみた。

 なお、調査時期は5月25日~27日、調査対象者は全国15~69歳男女で、感染区分は5月25日時点のものを用いている(「対象者の居住地域と感染区分」参照)。

図表1.「新型インフルエンザ」への関心度
 まず、今回の「新型インフルエンザ」への関心をみると、全体で80.4%の人が「関心がある(非常に関心がある+まあ関心がある)」と答えており、調査当時の関心はきわめて高いといえる(図表1)。関心の強さをみると、「関心がある」計では地域で大きな差はみられないが、「ヒトからヒトへの感染が確認されている」感染拡大地域(調査時点では兵庫と大阪)では、37.8%が「非常に関心がある」と答えており、感染未発生地域と10ポイント近く差がみられる。当然ではあるが「感染拡大地域」でより強い関心がもたれていることがわかる。

図表2.「新型インフルエンザ」の暮らしへの影響
 次に、「新型インフルエンザ」の暮らしへの影響をみると(図表2)、
  • 全体では「影響がある」は26.8%にとどまるが
  • 「感染拡大地域」では54.6%にのぼる
という結果である。
 特に「感染拡大地域」では、「非常に影響がある」人が25.9%にも達しており、暮らしへの影響度の強さが関心の高さの背景にあると考えられる。

図表3.影響の内容
 また、具体的な「影響」としては(図表3)、
  • 全体では「勤務先の出張や会議の延期・中止」が29.2%でもっとも多いが、
  • 「感染拡大地域」では「自身や家族の通う学校などの休校・休園」が56.4%
となっており、大阪や兵庫などでとられた一斉休校の措置が暮らしに影響を及ぼしていたことがわかる。

図表4.「新型インフルエンザ」への不安の度合い
 このように暮らしにも大きな影響を与えた「新型インフルエンザ」だが、不安の程度をみると(図表4)、
  • 「不安である 計」が52.9%と過半数に達しているが、
  • 「非常に不安がある」は12.7%
という結果で、不安は感じられてはいるものの、きわめて強いというわけではなく、地域による不安感の差もみられない。

図表5.不安を感じない理由
 一方、「不安を感じていない」という人も31.5%存在し、その理由をみると(図表5)、
  • 「普通の(季節性)インフルエンザと同等の対応で充分」が72.1%
でもっとも多く、
  • 「マスコミが騒ぎすぎなだけ」    45.7%
  • 「心配しても仕方がない」      31.6%
  • 「マスクや手洗いで予防が可能」   27.1%
  • 「感染拡大がおさまりつつあると報道されているから」              23.5%
が続く。今回の「新型インフルエンザ」は弱毒性であることや、予防が可能であることが周知されたことから不安が軽減されたと推測される一方、マスコミの報道を過剰と感じる意見もある。

図表6.5月上旬と比べての不安の変化
 国内での感染拡大がみられはじめた5月上旬と不安の程度の変化をみると(図表6)、
  • 「強くなった」計が18.7%に対し、
  • 「弱くなった」計が39.9%
と、調査時点ではすでに不安感はピークを越えたといえる。とくに「感染拡大地域」では「弱くなった」計が46.2%と全体より6.9ポイント高く、「感染拡大地域」ではより不安が沈静化したことが分かる。

図表7.「新型インフルエンザ」対策の
効果と費用のウェイト
 今回の調査結果では、関心は高い水準にあるものの、不安は沈静化してきたことをみてきたが、対象者が「新型インフルエンザ」へどのような対策をとった、あるいはとるつもりだったのかをみてみよう。

 「新型インフルエンザ」への対策として「費用」と「効果」のウェイトをみると(図表7)、
  • 「費用よりも効果を重視した対策をとる」人が12.2%
  • 「費用も効果も重視して、できるだけ効果のある対策をとる」が27.8%
で、効果重視層が40.0%存在する反面、
  • 「特別な対策をとるつもりはない」も32.8%存在し、
「費用」と「効果」のウェイトについては意見がわかれている。
 効果重視層の比率は、
  • 居住地域では「未発生地域」でやや高く、
  • 性別では女性
  • 年代的には上の年代層で
高い傾向がみられる。
図表8.対策として利用しているもの
 次に、実際に採用した対策についてみると(図表8)、
  • 全体では「液体石けん」が41.1%と唯一4割を超えているが、
  • 効果重視層では「液体石けん(59.4%)」「ウイルス対策用マスク(53.9%)」の利用者が5割を超え、
  • 「うがい薬」の利用も38.3%と全体に比べ15ポイント以上高い
という結果で、効果重視層では多様な対策が採用されていることがわかる。

図表9.「新型インフルエンザ」の影響で減ったもの、
減らしたいもの
 次に、生活行動の面での対策をみると(図表9)、「新型インフルエンザ」の影響により減ったものは
  • 「買い物、映画等以外のレジャーや外出」12.5%
  • 「大型商業施設での買い物」   11.2%
  • 「外食」             9.7%
などが上位にあげられており、レジャー関連の行動が控えられていたことがわかる。
今後について「減らしたい」ものをみると、
  • 「映画、スポーツ観戦など」   12.9%
  • 「海外旅行」          12.0%
  • 「国内旅行」          11.5%
があげられている。身近なレジャーの減少は下げ止まりの可能性もみられるが、旅行は今後とも抑制の傾向が続く可能性が高いといえるだろう。

図表10.「新型インフルエンザ」の影響で増えたもの、
増やしたいもの
 一方、「新型インフルエンザ」の影響で増えた生活行動はあったのだろうか。上位にあげられた項目は(図表10)、
  • 「食品や日用品の買い置き」   8.2%
  • 「ネットスーパーなどでの買い物」 7.3%
  • 「自家用車の利用」       3.8%
などがあり、いずれも外出を最低限ですませる「巣ごもり」型の消費となっている。

 国内での「新型インフルエンザ」の第一波の流行は収束に向かいつつあるが、南半球を中心に海外では流行は拡大しており、パンデミックの状態は今後1~3年は続くとみられている。
 今回の調査結果からは、感染地域を中心に暮らしに影響を受けながらも、危険度を冷静に判断し、身近な対策をとっている姿がうかがえるが、今後、国内で流行が再燃した場合、余暇・レジャー行動の抑制など、ようやく底の見えた景気に、悪材料となることも懸念される。



(2009.06)
【調査設計】
調査手法:インターネットリサーチ
調査期間:2009年5月25日~5月27日
調査対象者:当社インターネットモニター
      15~69歳 全国の男女個人
有効回収サンプル数:1,048サンプル
サンプル構成

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