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(2006.04)
放送・通信・エレキの融合
ケータイビジネスの新局面



 世間では「放送と通信の融合」が話題になっているが、日本の基幹産業という観点に立てば、「放送と通信、エレキ(エレクトロニクス)の融合」という、より大きなフレームで捉える必要がある。日本のGDPの10%を占める情報家電産業の産業政策が日本経済に大きな影響を与えるからである。
 このシリーズでは、携帯電話、テレビとパソコンなど放送と通信、エレキの融合をどのように捉えたらよいか、日本企業がどうやったら生き残っていけるのかを展望したい。
 はじめに取り上げるのは、ソフトバンクのボーダフォン買収が大きな話題となった携帯電話業界である。4月よりワンセグ放送も開始され、今後も番号ポータビリティ、イーアクセス等の新規参入など業界内競争の激変か、ドコモとauの2強時代かが議論されているが、その背後にはもっと大きな劇的変化が生まれようとしている。
 ここでは、携帯電話キャリアの大手3社の戦略を読みとりつつ、今後の劇的変化のなかで3社は生き残ることができるか、検討したい。

構成
ケータイビジネスの新局面
1.NTTドコモ、再度、インフラ勝負へ
2.ソフトバンク、ボーダフォン買収の真意
3.au、ドコモの追撃をかわしWiMAXにかける
4.ケータイビジネスをめぐる変化シナリオ - キャリアがなくなる日

(1)資金力のあるうちに積極投資でau追撃
 ドコモの苦戦が続いている。2005年度の契約者純増数はKDDIを抜いて3年ぶりにトップに立ったことになっているが、KDDIはtukaの契約者数の大幅減少が影響したものであり、ドコモ対auという構図で見ればauの契約者純増数はドコモをリードしている。
 しかし、ドコモは巻き返しのための攻勢に出ている。短期的にはauに匹敵する料金体系、コンテンツ、サービスの拡充があげられる。料金体系では、昨年11月に長期割引サービスを開始し、この3月にはパケット定額サービスを全利用者に拡大した。また、auにリードされていたコンテンツサービスでも積極投資で追撃を始めた。2005年10月、モバイルオークション分野では楽天と提携し、43億円を出資。11月にはタワーレコードと音楽コンテンツ、おさいふケータイで提携、128億円出資。さらに今年に入りワンセグ放送時代に対応すべく、フジテレビに出資(200億円)、日本テレビと投資ファンド設立(50億円出資)などである。
 またauをリードしている生活関連サービスでは、おさいふケータイに続き、クレジットカードサービスを積極的に拡充している。
 利益が出ている今のうちに積極的な投資を行い、短期、長期に向けた競争に打ち勝つ準備を整えようとしている。

(2)「ものづくり」からやり直し

 中長期的な観点からみれば、3.5G、4G時代に備え、チップ開発の段階からものづくりのやり直しのための布石を打ち続けている。
 ますは次世代LSI開発。昨年11月にTIと共同開発したFOMA向けLSIのサンプル出荷に加え、今年2月にはルネサステクノロジ、富士通などと次世代携帯向けプラットフォーム(チップ、OS、LSI)を共同開発するために150億円を出資した。 また次世代メモリ「RRAM」の開発に成功している。
 ソフトウエア開発にも力を入れている、次世代OS開発のためにアクセス(OSとブラウザ開発)に150億円出資、アプリックスにも130億円出資している。さらに、ウインドウズ・モバイルを搭載した台湾HTC社製端末の導入も決定した(1月)。今年2月には3.5G端末となるHSDPA端末の試作品も公開した。

(3)次世代の垂直統合モデル開発へ
 こうしてみていくと、NTTドコモは次世代携帯に向けて部品原材料レベルからコンテンツサービスまでを垂直統合する、かつて成功したビジネスモデルを次世代に向け再構築していることが読み取れる。
 収益の上がっている現在のうちに短期、長期の視点から積極的に投資することで垂直統合モデルを作り直そうとしている。総投資額はKDDI(au)やソフトバンクにはできない規模に達している。

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