新商品を市場導入する際に採用される主要な価格戦略に、スキミングプライスとペネトレイティングプライスがあります。
ペネトレイティングプライスは、市場浸透価格戦略、初期低価格戦略といわれるもので、新商品発売の際、初期段階では通常よりも低価格に設定し、早期に商品の浸透を図るものです。新商品の市場での革新性が弱く、競合が早期に出現する可能性が高い食品や日用品での採用が多くみられます。また、単位当りコストが安く、大量生産が可能な新商品の場合は、低価格による売上増を見込めるため、有効であると考えられます。
このペネトレイティングプライスを採用することができる条件は、以下のように考えることができます。
ひとつは、導入する新商品の市場での革新性が弱く、そのため競合が早期に参入する可能性が高い場合です。競合が参入する前に、短期間で市場への浸透や刈り取りを実現することが狙いとなるため、低価格設定が武器になります。
ふたつは、新商品で高いシェアの獲得を目指す場合です。市場への浸透の早期実現のために、低価格を活用することになります。
三つは、新商品に対する需要の価格弾力性が比較的高く、価格に対して購入者が敏感である場合で、ここでも低価格設定が有効となります。
さて、2004年12月に日本で発売された、ソニーのPSP(プレイステーション・ポータブル)は、発売後僅か3~4ヶ月で出荷台数が130万台にも達しました。2004年3月にはアメリカでも販売が開始され、初期出荷100万台と言われています。このPSPの日本での販売価格は、2万4,800円です。しかし、中国や韓国では5万円や6万円で売れるというので、店頭で売り出されると中国や韓国の人が行列して即完売したり、国内でも、最高5万で買い取る中古ゲーム店が出現しています。これは、設定価格の2倍ということになります。こうしたことをみると、今回のPSPの価格設定は、その商品価値に見合ったものというより、ハードは低価格設定で普及させ、ソフトウエアライセンスで利益を回収するという従来のゲーム業界の価格戦略を踏襲に陥ったものであり、もっと獲得できたはずのハードの売上を逃してしまったのではないかと指摘することができます。
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参照コンテンツ
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