一般に企業が製品価格を決めるときは、製造コストなど費用や製品の需要を考慮して決定します。企業側の決定に加え、消費者心理を考慮した価格設定として、「端数価格」「威光価格」「慣習価格」があり、こうした価格は「心理的価格」とも呼ばれます。
端数価格とは498円、980円など、500円や1,000円といった切りの良い数字より安いと感じさせることで購入を促す価格のことです。端数価格は日用雑貨や衣料品など幅広い製品分野で用いられています。しかし、端数価格を採用する場合には、価格差分を埋めるだけの売上増加が必要になります。したがって、販売数量の差が埋まらなければ、端数価格を採用しない方が良いということになります。
一般に製品価格が高いほど、その需要量は減りますが、逆に「価格が高いから買う」といったケースがあります。設定された価格が消費者に高品質、高級感などの価値を伝えるシグナルとして働いているので、価格を下げると却って需要が減ってしまいます。こうした価格を「威光価格」と呼びます。主な例として貴金属や高級ブランドの服飾品などがあげられます。購入頻度が少なく、品質や効果など製品価値の判断が難しい商品に多く用いられる傾向があります。
いくつかの製品には長期にわたり一定の価格に維持されているものがあります。そうした製品の価格を慣習価格と呼びます。典型例としては、自動販売機の缶ジュースがあり、現在メーカー、種類に関わらず120円に設定されています。1992年までは100円で維持されていましたが、消費者にとっては、「缶ジュースは120円」という認識が根付いています。慣習価格がついている製品は、一度設定されると非常に固定的であり、価格を下げても需要量は大きく伸びず、高くするとほとんど売れなくなってしまいます。そのため、原材料が高騰するなど生産コストが上がっても品質を下げるか、数量を減らすなどの対応をすることになり、あくまで価格を維持する政策が採られます。
無料の会員登録をするだけで、
最新の戦略ケースや豊富で鮮度あるコンテンツを見ることができます。
参照コンテンツ
- マーケティングFAQ 価格設定の方法
- マーケティングFAQ 新製品の価格設定
- マーケティングFAQ 「需要の価格弾力性」とは
- JMRからの提案 価格差別化戦略-利用チャネルをシグナルとした戦略的プライシング
関連用語
おすすめ新着記事
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。
成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場
コロナ禍で打撃を受けた市場のひとつに惣菜市場がある。特に外出自粛の影響を受けた百貨店の惣菜などが落ち込んだ。しかし、翌21年には早くも持ち直し、22年、23年と2年連続で過去最高を更新した。