最悪期を脱し緩やかながら回復の足取りを見せていた日本経済にも、先行きに対する下振れリスクが、高まりつつあります。 前の麻生内閣の置き土産でもある景気対策の効果も持続的には乏しく、長くても今年度一杯まででほぼ出尽くしとなりそうです。2009年後半以降、内外需の見通しは安定感を欠いており、消費の本格回復へのシナリオがみえない状況です。 2010年度の日本経済の見通しについては、外需は堅調だが投資と消費は失速し景気の低迷が続く、というのが主流のシナリオとなっております。先行き不安から企業の設備投資は更に抑制される可能性が高く、相変わらず続く雇用・収入の環境の悪さが消費の頭を押さえている状況です。残る頼みの綱の輸出も、財務相の円高「容認」発言騒動で88円台前半まで円が急騰したことで回復シナリオに暗雲が立ち込めています。 この冬のボーナスは大幅減が予想されており、収入低下とマインド悪化の両面で消費萎縮の引き金となるおそれがあります。90円を切る円高の状況が長引けば企業業績の悪化は進み、ボーナスの更なる減額に止まらず、雇用削減へと波及する危険性も孕んでいます。経済財政運営でもたつきと不手際を露呈させている鳩山新政権の政策対応は、今後の景気に対する最大のリスクとなりかねません。景気底割れの危機が現実味を帯びる中で、消費をとりまく環境は、ますます厳しいものとなりつつあります。 今号の概要は以下のとおりです。 「Economic Outlook for Japan」では、前号が発刊された2009年4月以降の経済情勢を整理し、二番底の危機に直面する日本経済の見通しと今後の消費の読み方を提示します。 「消費者から見る経済政策の有効性と限界」では、麻生内閣の下で進められた経済対策のうち、「省エネ家電へのエコポイント」「エコカー減税」「エコカー補助金」などの耐久財需要を直接刺激する対策は、消費者の支持も高いことが、弊社による調査結果からも確認されます。強い需要喚起効果を実現するには、財政政策の効果が出やすい層を見極めて耐久財需要を直接刺激する、ミクロとマクロのバランスを保った経済政策が重要となります。 「不況下における価格・品質政策-成否の鍵を握る弾力性」では、消費者調査のデータから価格変化がもたらす売上へのインパクトを計測する方法を紹介し、計測結果を踏まえて不況下での生き残りと収益改善に資する価格・品質政策のオプションを提案します。 2009年秋、日本経済の底流で生起しつつある変化の予兆を捉えて、一歩先を見据えた戦略的判断と行動の一助となることを企図して、「消費経済レビュー」第12号を実務家のみなさまにお届けいたします。
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