東日本大震災から1年余りが過ぎ、震災復興事業もようやく始動しつつありますが、被災地域では、がれき処理など復旧に関わる問題を抱え難渋を続けるとともに、復興の進捗スピードもなかなか上がらず、自治体関係者も個々の事業者もともに、地域の経済基盤の立て直しの青写真を描ききれない状況です。 公表されている経済指標を見る限り、好悪双方の材料が交錯する中で景気のもたつきが相変わらず続き、日本経済自身も本格回復への道筋を未だ描けずにいます。米国経済は回復傾向にあるものの、中国経済のスローダウンとEU経済の混乱・低迷が、日本の景気の先行きに影を落としています。設備投資は堅調な回復が期待されていますが、在庫・生産調整の足取りはなお重い状況です。 2012年度以降の日本経済の見通しについては、内外需ともに減速し景気の低迷が本格化していくシナリオが主流ですが、対抗馬として、その対極にある外需と設備投資を牽引役に景気が本格回復への道を歩んでいくシナリオも有力です。 消費は水面下での低迷を続けていますが、一部に持ち直しの気配が見えるなど、明るい材料が出始めています。雇用環境や収入環境の堅調ぶりや、消費マインドの改善傾向も、消費の下支えに寄与している格好です。 今号の概要は以下のとおりです。 「Economic Outlook for Japan」では、前号が発刊された2012年1月以降の経済情勢を整理し、一部に明るさは見え始めつつあるものの、景気回復のもたつきが相変わらず続く日本経済の見通しと、今後の消費の読み方を提示します。 「消費者からみた消費税増税のインパクト」では、政権交代から2年半を経て後の消費者の政策スタンスの変化を確認し、現在国会で議論されている消費税増税の受け入れ余地を探るとともに、消費税増税が消費に及ぼす影響を評価した上で、2年半の民主党政権に対する消費者側からの評価を総括します。 「人口減少と異質な世代交代の経済インパクト-OLGモデルによるシミュレーション」では、人口動態の変化がもたらすインパクトを把握するためのツールとして有用な世代重複(Overlapping Generation)モデルの概要を紹介するとともに、OLGモデル適用の新たな方向性として、世代間での量的な差異に止まらず、世代の本来の意味からみてより本質的と思われる、世代間での質的な差異を明示的に取り込んだOLGモデルを構築し、それらに基づくシミュレーション結果を紹介します。 2012年陽春の候、日本経済の底流で生起しつつある変化の予兆を捉えて、一歩先を見据えた戦略的判断と行動の一助となることを企図して、「消費経済レビュー」第18号を実務家のみなさまにお届けいたします。
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